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鈴木睦美 漆展 「大きな羊」
内金片口

鈴木睦美 漆展 「大きな羊」
1996年12月6日(金)〜21日(土)/午前10時30分〜午後6時 12月9日(月)・16日(月)は休廊
最終日は午後4時まで

鈴木さんの漆は確かに美しい。しかし、使ってみるとそれ以上に、機能性や楽しさや触感の素晴らしさの方が前面に出てくるのである。美術品としてだけではなく、工芸品としての本質を貫いていたことが心底わかってくる。
酉福店主 青山益朗

朱塗四方蓋物 / 蓮に童大鉢 / 内金片口 / 千鳥三段重 / 朱塗片口/朱塗楕円盃 / 真塗楕円銘々盆(五客組) /みる貝夫棗 / 朱塗延齢鉢 / 溜塗螺鈿梅平棗

ここに一枚の葉書がある。そこには、かつて見たこともない穏やかな曲線にかたどられた、それはそれはたっぷりと優雅な朱塗りの片口がのっている。とにかく私は、この"曲線″に惹かれた。実物を見てみたいという思いが募った。鈴木睦美さんとの最初のきっかけ、それがこの三年前に手にした個展の案内葉書である。

出張の予定を変更してまでも、私は"曲線"を求めて大阪へ飛んだ。ホテルの地下にある小さなギャラリーでの個展だったが、あまりにも独特な漆の世界に、その場が大きく広がったようにさえ感じられた。あった、あった、あの朱塗りの片口。先ず全体に楕円形である。そして口造りは、なだらかな曲線を描きながら、部分的に少し内側へ巻き込んだ様な格好をしている。直感的に乾漆(かんしつ)ではないと思ったが、ならばこの自由な動きの線を轆轤(ろくろ)で挽くことが可能なのだろうか?

次に私の目が、この片口の重さを測り始めた。しかし実際に手にした時、目の測量した重さは見事に裏切られた。衝撃的に軽い! そして肌。吸い付くような滑らかさで、すでにもう、私のものになってしまったかのように、離れ難い肌合いである。他の作品はどうか? 女房が何かを見つけたらしく私をせかして呼ぶ。そこに真塗の棗(なつめ)一品。蓋を開けるとしっとりと濡れたような金地。そして蓋を閉じる時、微量の空気の抵抗を感じながら、すーっと入って行き最後にぴたーっと収まった。その一体感がお見事。さらに驚いた事は、漆黒だと思われていた棗の表面に、"寿″の文字が一つずつ異なった書体で、びっしりと並んでいるではないか。私はこの棗を、茶を好む母の誕生日祝いに決めた。

と、ギャラリーの片隅に座っていた男性が、やおら立ち上がった。丸い眼鏡をかけた、関西風に表現するならば、いかついおっちゃんと言うところだろうか。しかし、作品の説明がやけに詳しい。そうか、この人が鈴木睦美さんだ。

いつも思うのだが、真の作品には言葉はいらない。解説を読み、歴史や技法を勉強し、その上に作家の略歴を憶え、だから良い作品がわかるというわけでもない。その作品自体が語りかけ、人の心を捕らえて離さない。そういう作品との出会いこそ、真に芸術瞬間なのだ。この人の作品に出会い、改めて本人の説明を聞いていると、次第に鈴木さんの立ち居振舞いが作品と重なり合ってきた。いかついおっちゃんどころか、優雅で繊細で且つ情熱的な人なのだ。話の途中でふと鈴木さんの手を見る。すべてのつめの先が黒くなっている。漆が爪の間にも指紋にも入り込んでいるのだ。仕事をしているな! 思わず中心が熱くなった。あの柔らかな曲線を生み出す、なんと力強い手か。

鈴木さんの漆は確かに美しい。しかし、使ってみるとそれ以上に、機能性や楽しさや触感の素晴らしさの方が前面に出てくるのである。美術品としてだけではなく、工芸品としての本質を貫いていたことが心底わかってくる。
平成8年12月 酉福 青山益朗



鈴木睦美 漆歴
1942年 漆芸家二代目鈴木表朔の子として京都に生れる
1975年 京都 高島屋美術画廊にて初個展
1976年 ストックホルム国立東洋博物館(スウェーデン)及びコペンハーゲン王立工芸博物館(デンマーク)にて漆芸展を巡回
1978年 個展・京都 高島屋美術画廊
1979年 個展・ 東京高島屋美術画廊
1981年 ブリュッセル王立歴史博物館(ベルギー) ケルン市立東洋博物館(ドイツ) シッツトガルト州立リンデン博物館(ドイツ) ロンドン ヴィクトリア&アルバート博物館(イギリス) 以上4ヶ所にて漆芸展を巡回
1982年 個展・東京 高島屋美術画廊 台北市立美術館にて漆芸展(台湾)
1983年 個展・京都 高島屋美術画廊
1985年 個展・大阪 大丸
1986年 個展・京都 高島屋美術画廊
1988年 個展・京都 高島屋美術画廊 個展・横浜 高島屋美術画廊 ストックホルム国立東洋博物館(スウェーデン) オックスフォードアシェモリアン博物館(イギリス) フランクフルト工芸博物館(ドイツ) サンフランシスコ東洋博物館(アメリカ)以上4ヶ所にて漆芸展を巡回
1989年 個展・大阪 ギャラリークロ ブリュッセル ジゼルクローエギャラリーにて漆芸展(ベルギー)
1990年 個展・大阪 高島屋美術画廊 ニューヨーク E&Jフランケルギャラリーにて漆芸展(アメリカ)
1991年 個展・京都 高島屋美術画廊 南京博物館にて漆芸展(中国) 東京 クエストホールにて漆芸展
ニューヨーク メトロポリタン博物館にて展示(アメリカ)
1992年 東京 アートクラブにて漆芸展
1993年 個展・大阪 高島屋美術画廊 個展・大阪 ギャラリークロ
1994年 個展・京都 高島屋美術画廊 メキシコシティー 現代美術文化センターにて漆芸展(メキシコ)
1995年 ハンメリンナ美術館にて漆芸展(フィンランド) 個展・東京銀座 和光ギャラリー 個展・長崎 金子真珠画廊
1996年 個展・福岡天神 岩田屋美術画廊 個展・東京南青山 酉福(ゆうふく)
1998年 個展・東京南青山 酉福
1999年 個展・東京南青山 酉福 個展・名古屋 光玄
2000年 個展・東京南青山 酉福 東京国立近代美術館 「うつわをみる」展出品
2001年 個展・東京銀座 和光ギャラリー 個展・名古屋 光玄 東京・京都 国立近代美術館 「京都の工芸」展出品
2002年 個展・東京南青山 酉福 鈴木睦美 自宅展
2003年 個展・東京南青山 酉福 真ギャラリー 個展・東京銀座 藤屋画廊

作品収蔵
メトロポリタン博物館(ニューヨーク・アメリカ) モダンアート美術館(ニューヨーク・アメリカ) アジアソサエティー(ニューヨーク・アメリカ) サンフランシスコ東洋博物館(サンフランシスコ・アメリカ) インディアナポリス博物館(インディアナポリス・アメリカ) デンバー美術館(デンバー・アメリカ) ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン・イギリス) アシュモリアン博物館(オックスフォード・イギリス) ケルン市立東洋博物館(ケルン・ドイツ) ストックホルム国立東洋博物館(ストックホルム・スウェーデン) リンデン博物館(シッツトガルト・ドイツ) ブリュッセル王立歴史博物館(ブリュッセル・ベルギー) コペンハーゲン王立工芸博物館(コペンハーゲン・デンマーク) 南京博物院(南京・中国) 宮内庁(日本) メキシコシティー現代美術文化センター(メキシコシティー・メキシコ) ミネアポリス博物館(ミネアポリス・アメリカ)


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