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店主のささやき
人間にはハムレット型とドンキホーテ型があるらしい。らしいというのは、さる評論家が某誌に書いた記事の中にあったことを思い出したからだ。その記事をたまたま読んだのは、もう40年ほど前になる。旅先で偶然買った雑誌に書いてあったのだ。車中でその某誌を読み出すと、筆者は「ハムレット型は聡明だが思い悩み、世の中を変えることは出来ない。ドンキホーテ型は無謀なことをするが、結局世の中を変える事ができる」と述べていた。そしてそのドンキホーテ型の代表として幕末の佐久間象山をとり上げ、彼こそが無謀にも幕府転覆を画策し大筒を作ったが、その行動力こそが世の中を変える源になるのだという。記事にいたく感銘を受けた私はその汽車の中で何故か自分の不明を恥じ行いを正すべきと思った。そして世の中を変えるためにはまず自分を変えねばと、あらゆる誘惑を立ちきり一人勉学に励んだ。それから40年、自分は変わったが世の中は変わったとは思えない。つまりまだ私はドンキホーテにはなりきっていない。いないというより、周りからおまえは変わり者と言われたりするが、世の中を変えるほどのこともしていないので、ひょっとすると私はハムレットなのかもしれない。
ところで、今回の村上さんだが、広島の尾道出身で、芸大に入り日本画を専攻された。卒業後、日本画の道に進まず、K式教育に携わる事になる。そのK式の先代の会長さんに私淑されたからだという。お二人でK式の教育方式を完成させたのだ。先代の死後、K式の会を辞め日本画に戻った。その画風は伝統的な日本画というよりも抽象画風のもので独自の境地を切り開いている。その村上さんが、今年に入り染め付けをしたいと言われた。言われたのをギャラリーのお客様から聞き、私どもが取り持ちある窯元にお連れした。すると直ちにそこで染め付けを描き始めたのだ。しかもそれからは毎週朝早く東京からその窯元へ行き、1日たっぷりと描く。それが焼きあがると、焼けた焼けたと出来上がったものを持ってこられる。意見を聞き、すぐにそれをとり入れた絵柄を作り出す。その上生地にまで注文を出し、使いやすさを追求するなどプロ顔負けの熱心さだ。これにはその窯元を初め私共まで圧倒され、いまでは逆に村上さんに意見を聞くまでになっている。さすがというかやはりというか絵を描く事においては専門家なのだが、それにもまして彼の何事にも挑戦する行動力が物をいっているのだ。絵の専門性と漲る力でみるみる村上流染め付けというものを作り出してしまった。その結果として今回の展覧会になるのだが、この村上さんの染付けを見ていると、新しい染付けの時代が来るという予感さえする。このような行動力こそが世の中を変える切っ掛けになるに違いない。まさにドンキホーテのような方だ。
平成17年8月吉日
酉福店主 青山益朗
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