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「立原」と料理」

酉福店主 青山益朗


料理: 焼き物 鴨竹葉つつみ

“梨と鮎の炊き合わせ ごま酢かけ”という料理が、北出昂太郎作の九谷色絵深鉢に盛り付けられている写真をある出版物で見た。

九谷独特の色彩を用いながらも、白地の余白を見事に生かし、緑色の龍や鶴、それを取り巻く青や紫の雲が、実にリズミカルに描かれているその鉢の中に、黄金色に仕上がった西洋梨とふっくらと光る鮎が在り、上からクリーム色のごま酢が優しく掛けられていた。美しくて穏やかな印象の料理と器との関係に衝撃を受け、是非この人の料理を食べてみたいと思った。

これが、この漆の器に写真の料理を拵えた立原潮さんとの出会いである。

懐石「立原」は恵比寿にある。 “懐石”という従来の和のしつらえではなくむしろモダンなイタリアンを思わせる店内。

潮さんも、グリーンのチーフを首に巻き同じくグリーンの靴を履いていて、“料理屋の亭主”というよりも “シェフ”というふうである。肝心の料理だが、とにかくそれまでに食べた事のある“料亭風” “懐石風” “割烹風”いずれでもなく、しかし確かに日本料理であって、自然に生きている素材の個性を上手に引き出し、それから膨らませる料理法である。

器も既存の組み合わせとは違い、潮さんならではの美意識で構成されていて、料理の味を誘って来てくれるかのようだった。

野菜が豊富にそして巧みに使われている献立のせいか、食後には“腹八分”の心地よさがのこり、精神の隅々まで満足感が行き渡る。なるほど、この店は“感じる”料理店だと私は思った。



立原 潮(たちはら・うしお)

1948年、立原正秋の長男として鎌倉に生まれる。父の影響を受け、28歳で料理の世界に入る。京都の美山荘、東京の白紙庵で修行。特に美山荘の中東吉次氏の料理を学び会得。その後イタリアでの勉強などを経て1991年、恵比寿に懐石「立原」を開く。

立原 潮 著作
立原正秋の空想料理館
メディア総合研究所
1998年初版 2850円(税別)
料理と器 立原正秋の世界
平凡社
1994年初版 2500円(税込)
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