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展覧会見て歩き

110人もの第一線作家の作品が一堂に会する「漆・うるし展・・春をたのしむ・・」
前史雄(人間国宝)作 沈金棗「蕗の薹」


 この展覧会は「第22回日本文化財漆協会会員漆芸展」である。そこでまず、日本文化財漆協会について簡単に紹介しておこう。

 この協会は「世界に誇る漆文化を守り続ける」ための活動拠点として昭和47年に設立された。主な活動は日本産漆の保存、生産で、岩手県浄法寺町などに漆樹を植林し、平成 2年からは掻き取りが始まった。生産された漆は会員に販売されている。現在会員は漆芸作家を中心に約500名。協会の趣旨に賛同し、会費を出そうという人なら、だれでも入会できる。「漆・うるし展」は協会の活動の一環として2年に一度開かれるが、原則として出品される作品には日本産漆が使われている。



首藤雅也作「乾漆鉢」
 出品者数は110名を超える。今回のテーマは「春をたのしむ」。現在日本の第一線で活躍する作家たちの作品が一堂に会するわけで、壮観である。販売会だから、見るほうの目が多少物欲にギラつくのもやむを得ない。案内していただいた首藤雅也さんによれば、「デパートということを意識したせいか、あるいは収益の一部が協会に還元されることを考えていただいたせいか、出品したみなさん、価格を低くおさえているのが今回の特徴」だそうだ。そう思って値段に注意してみると、なるほど、一般の人にも十分手が届くものばかりだ。

 作品は器、オブジェ、茶道具からアクセサリーまで、当然のことながら幅広い。どの作品を紹介するか、迷いに迷ったが、ジャパンうるしネットではこれまで紹介したことがない作家の作品を、何点か選ばせていただいた。その中で「縄胎」というめずらしい技法を使った作品が目にとまった。作者の中川泉さんが、たまたま会場にいらっしゃったので、自作解説をお願いした。


中川泉作 縄胎大皿小宴揃器 パーティーセット「常春(とこしえにはる)」

「縄胎というのは、縄を皿や鉢の形に丸く巻いて、漆で固めて器胎とする技法で、最近はあまり見ませんが、昔からある技法の一つです。ロクロなどと違って、形を自在に作れるのが魅力です。私の作品の場合、大皿は麻縄、小さい皿は綿のひもを使いました。ただ、昔の技法そのままでは漆を大量に使うことになり、とても一般に売れるような値段にはおさまりません。クラフトとしては無理なのです。そこで一計を案じまして、縄を石膏で固めました。こうすれば強度の面でも問題ないし、型だけなら一日でできてしまいます。制作時間を短縮し、値段もおさえることができたわけです。ただ、漆の仕事をする人間として、やはり最初から漆を使いたい。漆に対する信頼は強いですから。それをどう我慢するか。この作品は辛抱のたまものですよ」

 こうした苦心のドラマが一つ一つの作品にあることを思いながら、会場をもう一度ゆっくり見て回った。


三田村有純作
「花開くモンサンミッシェル」

根元曠子作
ペンダント「A」「B」「C」

坂下直大作
刷毛目塗盃「松籟」

磯井正美(人間国宝)作
「蒟醤櫻花青春盆」

大西慶憲作
「朱溜塗椀」

満元千鶴子作
縞黒檀文鎮「春」

増村紀一郎作
「乾漆酒器」

酒井邦芳作
栃拭漆蓮華「芽吹き」

照屋和那作
「相思樹中次」

「漆・うるし展・・春をたのしむ・・」は2003年2月18日(火)から2月24日(月)まで、日本橋三越本店6階美術特選画廊(代表・03-3241-3311)で開かれている。時間は10時〜19時30分(ただし20日は18時、23日は19時、最終日は16時30分まで)。

文と写真: 岡崎 保 



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