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展覧会見て歩き


エスカレーターで吹き抜けのビルの11階まであがると、左手に通路側がガラス張りになった展示室が見えてくる。 展示室内の壁は様々な文様の織り物(綴織[つづれおり]中心)で飾られ、真ん中のスペースと入り口付近に漆が展示されているようだ。 会場に入ると、織担当・理事の斎藤一郎さんと漆担当・副理事長の和田伊都子さんが迎えてくれた。

まずこの作品展を企画した、「NPO法人 工芸技能研究所」について簡単に説明したい。

「NPO法人 工芸技能研究所」は、発達障害児・者(知的障害・学習障害・自閉症)の方を対象に、人工素材に頼らず自然の素材を用い、手技による織・漆の技能の専門教育を行っている。技能を基礎から修得するための「工芸技能養成所」と養成所修了者が制作活動・受注・販売をする「工房」がある。

今回の作品展は、この工芸技能研究所で制作に励む方々の日々の積み重ねの発表の場だ。



織担当・理事の斎藤一郎さん(左)と漆担当・副理事長の和田伊都子さん(右)

ぐいのみ (工房) 浅古太郎さんの作品

漆担当の和田さんにお話をうかがった。

現在漆を制作している方々は5名。先生は和田さんだ。生徒さんのそれぞれの個性や段階により、どういったものを作るかを和田先生から提案していくそうだ。

それでは、和田さんの解説で出展作品を何点か紹介しよう。


1. 文箱 (工房) 藤岡徹さんの作品

1-2. 文箱の拡大写真 (工房) 藤岡徹さんの作品
1. 文箱 (工房) 藤岡徹さんの作品
「花びらの筋は沈金技法。沈金刀でほって、金をうめています。箱は総布張りで麻布が貼ってあります。本当は継ぎ目だけでいいのですが、勉強もかねて総布張りにしています。」藤岡さんの漆歴は10年ほどになるという。
2. 銘々皿 (工房) 疋田雅さんの作品
「触ってみると凹凸があるのがわかります。これは、紅葉の葉を拾ってきて、その上に黄色と赤を10回くらいは交互に塗り重ね、最後に軽く研いで本物の葉の凹凸を生かしています。」黒地の部分は、しっとりとした蝋色塗りだ。

2. 銘々皿 (工房) 疋田雅さんの作品
3. 文箱 (工房) 藤岡徹さんの作品
この構図は見本帳から写している。まず模写を勉強するのだという。
バックの金の装飾部分はマスキングテープを利用。生漆⇒金粉(金箔の屑)を蒔く⇒和紙をあてて抑えて接着させるという工程。モチーフの縁取りは銀紛。最初に輪郭をとり、それから輪郭の中を塗っている。


3. 文箱 (工房) 藤岡徹さんの作品
4. 大鉢 (専門コース) 中澤隆太さんの作品
「卵殻と微甚貝を蒔いて、研ぎだしています。金箔を貼り、最後に朱合漆を塗っています。塗ったばかりは暗めですが、時間がたつと金がでてきます。津軽塗りを参考にした変り塗りです。」
卵殻と微甚貝を一箇所にかたまらないように、均等に蒔く感覚が大切で、下地からはじめて完成まで一年半くらいかかったという。

4. 大鉢 (専門コース) 中澤隆太さんの作品
5. 銘々皿 (工房) 疋田雅さんの作品
「朱は塗りむらが目立つので塗るのが難しいですね。ここまできれいに塗り上げるにはかなり練習をかさねてきました。」

5. 銘々皿 (工房) 疋田雅さんの作品

6. 蓋付き椀 (工房) 藤岡徹さんの作品
蝋色塗りできちっと仕上げることができるようになるまで年数がかかるという。 「塗りと研ぎがきれいにできていないと、蒔絵もきれいに仕上がらないですね。やはり、基礎からきちんと積み上げていかないといけません。」

6. 蓋付き椀 (工房) 藤岡徹さんの作品
7. 欅中皿 (工房) 浅古太郎さんの作品
15年という浅古さん。木目が美しく出ている。

7. 欅中皿 (工房) 浅古太郎さんの作品
8. 飯椀 (工房) 疋田雅さんの作品
「漆というと一般的にお椀のイメージが強いのですが、漆の飯椀にご飯を盛ると、白米が本当にきれいに見え、美味しくいただけて食事も楽しくなります。ぜひ皆様にお椀だけでなく、飯椀のよさも知っていただきたい。うちのオリジナル品になればと思っています。」

8. 飯椀 (工房) 疋田雅さんの作品
9. 欅 小鉢 5種 (工房) 浅古太郎さんの作品
漆に卵の白身をまぜて、ヘチマでたたいて研ぎだしたもの。ヘチマでたたいた部分の色の出かたがユニークだ。

9. 欅 小鉢 5種 (工房) 浅古太郎さんの作品
10. 青貝丸皿 体験講座 地曵健太さんの作品
「去年始めたばかりの体験講座の生徒さんの作品です。漆の楽しさを知ってもらうためのものです。」

10. 青貝丸皿 体験講座 地曵健太さんの作品



制作過程の写真

漆塗り工程見本

お椀の比較

展示には工夫がこらされている。制作過程を撮った写真や、漆の塗り工程が分かるように段階別の塗り見本が置かれていたり、「触ってみてください」と一般の量産品と本物の漆塗作品が並べてあったりする。

早速2つの椀に触れてみた。
目止めもきちんとされておらず、スプレーで手軽に仕上げられた大量生産のお椀と、丁寧に下地から手をかけて塗り上げられたお椀との違いは素人でもすぐにわかった。スプレー仕上げのザラッとした感触と、漆の滑らかで確かな厚みの違いは明らかだった。

作品の木地は、石川県の山中の木地師の方に頼んでいるそうだ。
「木地師はたくさんいるけれど、上に漆を塗ることを知っている方でないと、塗りにくかったり、野暮ったくなったりするんです。」
木目が一つのデザインとなっていきいきとした表情をもっている木地だ。木地師により、木目の出し方が違うという。

―皆さんご自分で作ったものを使われているのですか?
大事にとっておく方も、使っている方もいます。
でも、漆はどんどん使ってもらった方がいいですね。味がでてきますので。

ちなみに現在専門コースで制作されている漆歴7年の中澤さんは、ご自分でも使っていらっしゃるとのこと。出展作品の全てを気に入っており、塗っている時はやはり面白いということだ。

―今日は展覧会2日目ですが、反響はどうですか?

初日は雪で。。。でもお見えにならないかと思っていたら、沼津の方から来てくださる方もいたり。今日は天気もいいですし、たくさん来ていただけるといいのですが。

―こういった催しは何度もされているのですか?

今回が初めてです。なかなか場所の予約がたいへんなのです。今度は都心の方でもやってみたいと思っています。

―作品展を開くまでで、何かエピソードのようなものはありますか?例えば漆にかぶれたとか。

最初はみんな漆にかぶれて。親御さんはかぶれを心配されていたのですが、当の本人たちは全然意に介さず、もう夢中になってやって。ほんとに一生懸命勉強するんです。

こうしてひたむきに制作された作品は、なんとも魅力的だ。


お盆 (工房) 藤岡徹さんの作品

お盆 (工房) 藤岡徹さんの作品

「NPO法人 工芸技能研究所 作品展 漆・綴」は2004年3月20日(土)〜3月24日(水)まで、八王子市学園都市センター・第1ギャラリーホール(JR八王子駅前・八王子スクエアビル11階 TEL 042-646-5611)で開かれている。時間は11時〜17時(最終日は16時まで)。
作品にご興味のある方、ご注文なさりたい方は「工芸技能研究所」(東京都日野市落川993 2F TEL:042-592-4353)へご連絡ください。

文と写真: 山下真紀 


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