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2004年も残すところわずかとなり、当然のことながら、いろんなジャンルのお正月企画が町にあふれている。漆も例外ではない。今回は渋谷の「草so」と茗荷谷の「スペースたかもり」のお正月企画をハシゴしたので、その報告をしたい。
「草so」はこじんまりとしたギャラリーで、点数も多くはないが、大滝正明・真一郎(竹・漆)、艸田正樹(ガラス)、中野知昭(漆)、福田敏雄(漆)、丸山龍一(白磁)と、いろいろな人の、いろいろな作品が見られて楽しい。とはいえ、お目当ては漆。中野知昭さんとお会いできたのも、予想外の喜びだった。
中野知昭さん
片口と平盃
飯椀
中野さんは鯖江の塗師屋の2代目で、29歳。問屋さんからの仕事で生計をたてながら、自分の器づくりにも打ち込み、将来、独立をめざしている。純朴そうで、職人らしい寡黙さが好印象の青年だ。
「お正月に限らず、毎日使えるもの、毎日使っても大丈夫なものを心がけています」という。その言やよし、である。
中野さんの器はとにかくしっかり塗ってある。浮ついたところがない。しかし、では、まったく伝統的なだけのつくりかというと、片口の丸みや、飯椀の微妙な端反の具合に、なんとなく新鮮なものを感じる。といっても、これは感じ方の問題かもしれないが。デザインなどはどうしているのだろうと思って、聞いてみた。
「いまのところは、ほとんど思いつきですね。木地屋さんに注意されることもあります、思いつきだけで作るなと(苦笑)。それから、せっかくきれいに挽いたんだから、きれいに塗ってくれといわれます。古い感じを出すのがはやっているでしょう。でも、どうせ使えば古くなるんだから、最初ぐらいきれいに塗ってくれと。それが塗師屋の仕事だろうと」
なるほどなあ、と思った。立場が違えば、思いも違う。一つの器の背後にはさまざまな立場の人の、さまざまな思いがあるのである。
まだ品数が少ないので、この傾向で、今後は品数を増やしていきたいという。レパートリーを広げるということだろうが、中野さんの大々的な個展の取材をして、みなさんにご報告できる日が近いことを祈りたい。
漆はもう一人、福田敏雄さんの器が展示されていた。福田さんは、「見て歩き」でも何回かご紹介したことのある人気作家の一人だが、この年末は大忙しのようだ。 その後、鯖江の雑煮には具が入らないなどという、ちょっぴり正月気分を味わえるようなよもやま話をして、中野さんと別れた。
丼
五寸五分重箱
六寸皿と飯椀(福田敏雄作)
轆轤細工の鏡餅(高田晴之作)
二段丸重(岩舘隆作、色違いを互い違いに重ねたもの)と三寸小鉢蓋付(長井均作)
狂った器(須藤賢一作、わざと狂わせ、正円ではなくした)
丸重と蒔地豆皿(桐本泰一作)
「スペースたかもり」を主宰する高森寛子さんが、お正月の器を集めるというので、ちょっと意外な気がした。高森さんは常々、普段から気軽に漆器を使うことを提唱していて、お正月しか使えないような漆器は、扱ってこなかったからだ。案内状を見直してみて合点がいった。「使い初めはお正月」とちゃんと書いてあったのだ。
「迎春用の漆器をやるつもりはないんです。そうじゃなくて、新しい年に新しいものを使い始める。たとえばお正月は下着は新しいものを着て、新年を迎える。それと同じように、お正月を漆器を使い始めるきっかけにしてくださいということです」
華やいだ感じを出すために重箱(高森さんは「重ね箱」と呼ぶ)や片口などを、いつもより多く展示しているが、もちろん、お正月以外にも使えるものばかりだ。お客さまがくることになれば、茶托なども気になる。そこで茶托も展示されているが、いずれも取り皿にもなるような茶托である。汎用性が重視されているのだ。
「暮れになると、若い方で、お重が欲しいといってくる方が多いんです。使うきっかけ、買うきっかけに、お正月というのはひとつあるだろうということで、今回企画しましたが、ただ、お正月をきっかけに買うけれども、日常でもどんどん使わなければもったいないですよ、ということなんです」
高森さんにいわれて、ほんとうにそうだと思ったが、たとえば重箱などは、お正月だけではなく、子どもの誕生日などの人が集まるときには、実に重宝な器なのだ。重ねるということが、まず収納として優れている。蓋付だから、料理が乾燥してパサパサになることもないし、ホコリもつかない。お客さまが集まったときに、ワーッと広げれば、パフォーマンスとしても楽しいし、料理だって立派に見える。こんなに便利なものを一年に一回しか使わないというのは、損な話である。
今回の展示は、木地師・高田晴之さんの「轆轤細工の鏡餅」を企画のメインに据えている。これはスペースたかもりのヒット作の一つで、なんともかわいらしい鏡餅である。銀杏の木でできているそうで、遠くで見ると本物の鏡餅にしか見えない。この轆轤の技は驚くべきものなのだろうが、そんなことは感じさせないところが、またいいのである。
漆器は手にとって見てもらいたい、これも高森さんが提唱していることの一つである。あまり仰々しくセッティングすると、お客さまが手にとれないのではないかという配慮から、会場に入っても、それほどお正月を感じないかもしれない。しかし、アイディア次第で、演出はいかようにもできる。そのへんは、ぜひ高森さんにアドバイスを求めるといいと思う。
今回展示されているのは次のような作り手たちの器である。石畑哲雄、岩舘隆、小田原延子、寒長茂、桐本泰一、佐竹康宏、須藤賢一、手塚英明、滝村弘美、中島和彦、長井均、福田敏雄、伏見眞樹、富士原文隆、他・・・こんなにたくさんの人の器を集められたのは、高森さんならではだろう。それだけでも一見の価値がある。
銘々皿(右端)と茶托(佐竹康宏作)
一本取片口拭漆仕上(藤村金作作・故人一本取とは一本の木から削ったもので注口の根元に継ぎ目はない)
長手箱、角片口、三・九寸皿(長井均作)
■「お正月じたく おもてなしのうつわ展」は2004年12月10日(金)〜12月18日(土)まで、東京都渋谷区渋谷2-3-4 スタービル青山2F 草so(03-5778-6558)で開かれている。時間は12時から20時まで。
■「第3回轆轤細工の鏡餅 同時開催 漆の器展/使い初めはお正月」は2004年12月10日(金)〜12月23日(木)まで、東京都文京区小石川5-3-15-302
お菓子調進所一幸庵3F スペースたかもり(03-3817-0654)で開かれている。水、日曜は休み。時間は11時から18時まで(最終日は16時まで)。
文と写真: 岡崎 保
中野知昭さんのプロフィール
1975年
福井県鯖江市河和田町に生まれる
1995年
国立福井工業高等専門学校土木工学科卒業
県内建設コンサルタント会社に入社
1996年
家業(父は塗師 畠中昭一さん)を継ぐ
2000年
福井県金津創作の森酒の器展大賞受賞
2003年
金沢椀One大賞において優秀賞受賞
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