
「静界」を解体したところ |
今回の作品で目立つのは、ぼかし塗りの多用である。いわゆるグラデーションである。椀の縁、鉢、もちろん組器にも採用している。
「最近、ぼかし好きみたいですね(笑)。
徹夜で仕事していると、だんだん朝になって、闇が薄れて明るくなるでしょう。逆に昼から夕方になるのでも同じですけど、そういうのって時間の流れを感じますよね」
器の精神性とか、時間の流れとか、なんだか哲学的でとっつきにくい人ではないかと思われると困るので、大急ぎでつけ加えておくが、ご本人はむしろとっつきやすい人である。芸大の先生とは思えないぐらいだ。

漆鉢「陽韻」 |
組器にしても「遊び」の要素が濃厚である。井波さんはこんな使い方を推奨する。
「全体は見せないで、ひとつずつ出していくんです。
で、食べおわって器が空になったら、横に積み上げていく。
気がつくと、最後に仏塔が出現する。これ、どうです?」
組膳は、ただ乗っているだけに見えるが、実ははめ込んである。これをばらばらにして、お通しから、ちょっとしたおかずを盛ることができるというアイデアである。
ただ、使い方は使い手の自由であることを井波さんは強調する。井波さんの現在の関心は、漆という素材とロクロによる組みの表現で、それを追求しているだけなのである。
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