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漆のジュエリーとはどういうものか?伊藤達皇 漆工宝飾展 2002年10月2日(水)〜10月15日(火) 銀座松屋 7階アートスポット

伊藤達皇(いとう・たつこ)さんは、もともと漆のパネル絵を描いていた。しかし、漆は粘りがあるので塗るのに力がいる。大きいものになると重いので、乾燥風呂への出し入れも女性には重労働だ。体力的な限界を感じたという。

「そのうちに小匣や棗など、作るものがどんどん小さくなって、最終的にこんなに小さなジュエリーに行き着いたわけです。」

ネックレス(琥珀・プラチナ・シルバー)

そういって笑う。もちろんジュエリーが好きという下地があってのことだ。

体力的には楽になった反面、小さいゆえの苦労もある。何といっても作業がしづらい。どうせ見えないだろうと手抜きすることは許されない。小さいものだけに、かえってためつすがめつ見られるのがジュエリーなのだそうだ。

「私、眼がいいんです。だから何とかやっていられるんです。」

ブローチ(水牛・金箔)

取材前、「漆工宝飾」とはどういうものなのか、うまくイメージできなかった。実際に作品を見ても、漆工品という印象は薄い。やはり金属の光がまず目に入るからだろう。

それこそためつすがめつ、目を近づけて子細に見てはじめて、驚くことになる。こんな小さな面積に、広大な漆の世界が広がっている !

鼈甲、水牛、琥珀、貝、そしてもちろん木も使うが、そうしたさまざまな土台に蒔絵や螺鈿などの技法が施してあるのである。すべての素材に漆が合うわけではない。むしろ、そのままでは基本的に塗れないと考えたほうがいいのだそうだ。

そこで試行錯誤が始まる。伊藤さんの家には、実験してうまくいかなかったものがたくさんあるという。

「完成したときもうれしいけども、いちばんうれしいのは、お客さまが実際に身につけたのを見たときですね。赤い洋服につけたのと黒い洋服につけたのとでは、同じ作品でも全然印象が違います。」

ペンダント(琥珀・薄貝新玉虫・K24シルバー)

フォトスタンド(プラチナ箔)

伝統的な漆芸の世界とは異なり、流行の激しい世界である。伊藤さんも流行を意識して製作している。そこに「自分」など入る余地がないように見える。

「でも、お客さまから『あなたらしいわね』とよくいわれます。自分では意識していないのですが、何かそういうものがあるのかもしれませんね。」

10代から、上は80代まで、伊藤さんの作品はまったく年代を問わない。

「男性もよく買っていきます。ブローチをマフラーに止めたりすると、素敵です。」

牽強付会といわれるかもしれないが、こうした普遍性は漆ならではのものではないだろうか。

伊藤さんは「ゆっくり製作したい」ために、現在は富山県に住んでいる。

伊藤達皇漆工宝飾展は2002年10月2日〜10月15日まで東京・銀座松屋(03-3567-1211)7階アートスポットで開かれている。10時〜20時(最終日は18時閉場)。

岡崎 保


ブローチ(金箔)

伊藤達皇(いとう・たつこ)さんのプロフィール
東京都杉並区出身
昭和女子大学生活美学科卒
尾長保氏(日展評議員・日工会常任理事)に師事
富山県婦人美術展、富山県展で初奨励賞受賞
以後、松屋銀座、香林坊大和、高岡大和、箱根プリンスホテルなどで個展を開催
現在、富山県在住
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