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展覧会見て歩き

漆絵を楽しむ器「漆・鴨田雅文 作品展」12月12日〜12月18日 東武百貨店池袋本店


会場に一歩足を踏み入れて感じるのは、「これ、漆展?」という軽いいぶかしさである。通常の漆展でまず目に飛び込んでくるのは、朱と黒、そのかなり強い対比である。それがない。

陶器かな、と一瞬思う。さまざまな色、大胆な構図の絵柄に囲まれるからだ。


 

布目泰山木文大鉢

さまざまな色と書いたが、色調は一貫している。単純な原色は意図的に排除され、光を吸収して底深く輝く微妙な色合いが選ばれている。しかも、器の表面には花や植物がうねるように力強く描かれている。


ヘギ目菖蒲文尺二丸盆

布目螺鈿二段丸重

印象が強かった分、質問が性急になった。どうしてこういう器を作るのか、一刻も早く知りたいと思ったのだ。さっそく切り出す。

鴨田さんはニコニコしている。

「工芸というのは、基本的な技術の習得から始まりますから、最初は朱、黒、溜め、などの作品を作っていました。

ただ緑、専門的には青漆(せいしつ)といいますが、これは最初から使っていたような記憶があります。

基本がある程度できてくると、今度はもう少し自分の感性で、自分の好きなものを作りたいという気持ちが芽生えます。

で、緑だけじゃなくて、もっといろんな色を使い始めました。5、6年前からですね」

この答えではちょっと納得できない。作品の迫力に見合っていない気がする。しかし、なぜ自分がそういう作品を作るのかなど、作者にだってわからないのかもしれない。



石榴文盛器

鴨田さんは函館生まれだが、育ちは鎌倉である。いちばん身近な漆といえば鎌倉彫だ。大学卒業後、一時鎌倉彫の塗りのアルバイトをしたこともあるという。その影響は、鴨田さんの案外深いところに潜んでいるのではないか。漆絵の力強さといい、全体のテイストが鎌倉彫に非常に似ている「石榴文盛器」などを見てそう思った。


一閑塗箔文瓢型菓子盆(白檀塗)

挽目研出大鉢

漆の固定的なイメージを打ち破りたいという鴨田さんは、技法的にも貪欲だ。

木地の上に金箔を貼り、その上に漆を塗って下の金を沈んだように見せる「白檀塗」。下地をタンポンのような道具で叩いて付け、ザラザラした表面を作る「叩き」。あるいは「挽目」という独自の技法も考案した。

普通挽目といえば、木を削った模様をいう。鴨田さんの挽目は、漆を塗った器を回転させ、それにへらを当てて作り出す模様のことだ。

「挽目をやると漆が厚く塗れるので、器は丈夫になります。ただ、厚すぎると漆が縮んで失敗することがあるんです。

だから、真夏は挽目は作りません。失敗しやすいんです」

最後に、今回展示された作品の中で、鴨田さんがいちばん気に入っているものを教えてくださいとお願いした。

鴨田さんは迷わず、会場入口正面に飾られた「布目泰山木文大鉢」を挙げた。今回の展覧会に間に合うかどうか、ぎりぎりまでかかって完成した作品だという。

堂々としている。絵柄と器の形の調和が見事だと思った。



叩き銀彩大鉢

別れ際に鴨田さんがいった、

「最近は使命感を感じることもあります」

花文小椀(内朱

布目曙塗大皿

という言葉を考えながら会場を後にした。鴨田さんは大学2年のとき、漆、陶芸、鋳物の3つを1ヵ月ずつ体験実習し、漆の不思議な魅力に取りつかれてこの世界に入った。

当時はデザインブームで、芸大も大いに欧米化したわけだが、そんな中で、日本の美を追求する工芸科は特別な存在だったという。自分が漆を選択したという矜持と、自らの文化をないがしろにする風潮に対する違和感が、鴨田さんの「使命感」につながるのではないかと想像した。

そしてその「使命感」は、単に古いものを守るだけではなく、「いろんな漆があることを知ってもらいたい」という鴨田さんの、創作活動の原動力になっているに違いないと思った。

文: 岡崎 保



布目薔薇文楕円皿

漆・鴨田雅文作品展

2002年12月12日(木)から12月18日(水)まで東武百貨店池袋本店(03-3981-2211)の6階1番地、美術画廊で開かれている。営業時間は10:00〜20:00。最終日は16:30まで。
鴨田さんは期間中は毎日会場に詰める予定。


鴨田雅文(かもた まさふみ)さんのプロフィール
1955年 函館に生まれる
1979年 東京芸術大学工芸科漆芸専攻卒
1984年 日本クラフト展に出品(85年、86年、87年)
1990年 東武百貨店池袋店にて第1回個展(以降隔年開催)
1996年 「世界の漆・うるし展」招待出品
現在、世界漆文化会議評議員

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