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展覧会見て歩き

生活空間にそよ風を「木漆スタジオ温展」


展覧会の案内状には「鉄の仕事とのコラボレーション」とある。木と漆と鉄・・いったいどんな展覧会なのだろう。

会場に入って真っ先に目に飛び込んできたのは、ストーン・サークルである。というのは冗談だが、縄文時代の遺跡のような、正体不明の木の展示物にとまどった。

スタジオ温の工藤茂喜さんの説明に、さらに驚いた。これはだというのだ。



枕座「桐の環」

「睡眠用の枕としてはちょっと高いかもしれません。酒宴の友ですね。

お酒を飲んでいい気持ちになったら、ちょっと横になりたくなる。そんなときに脇の下にでも入れてもらうと快適だと思ったんです」

気の置けない、くつろいだ酒宴の光景が一挙に目に浮かぶ。小ぶりの枕は子ども用か。そう思ったとたん、車座になった大人たちの間を子どもたちがはしゃぎまわっていた。

枕かあ、すごいなあ。


まつり鉢

酒宴からの連想だと思う。「まつり鉢」には酒を入れたいと思った。ひと抱えもある大きなブナコの鉢である。これになみなみと酒を満たし、各人が勝手に杓で呑むのである。

工藤さんがすぐ賛成してくれる。

「桜の季節なんか、花びらが浮かんでいたりして」

いい。すごくいい。


飯椀

ブナコというのは、木の皮を幅1センチほどの紐状にして、それを巻いて形を作る技法である。巻尺を固く巻き、中心を押して凹ますとコマのような形になるが、あれを想像してもらえばいいだろう。それを漆で固めるのである。

どんな形も作れるし、ロクロにはない歪みが出て面白い。工藤さんは敢えて整形しないで、ぎざぎざを残している。「飯椀」もブナコだ。

ところで、鉄とのコラボレーションだが、「まつり鉢」の脚を見てもらいたい。ブナコの回転のイメージをそのまま脚にも伝え、ねじれたようになっている。

工藤さんのパートナーであるかおるさんが説明してくれる。

「金属はどうしても固くて、四角四面のイメージが強い。でも、いくらでもやわらかくなるということを見せたかったんです。

このテーブルも、脚の曲線に合わせると、こういう形になってしまいました」

「Tohu」

そのテーブルの題は「Tohu」。はてな?

「豆腐を置いたとき、自分の重さで、こう、歪むでしょう。だからTohu」

くだらない、などといってはいけない。これはデザインというものの、かなり本質に関わる発言といっていい。



亀脚酒宴座卓「KAME」

もうひとつ例をあげよう。「KAME」と題された座卓だ。「KAME」はいうまでもなく「亀」である。どうして座卓が亀なのか、ミもフタもない質問であることは承知しながら、敢えて聞いてみた。

そのときの2人の会話。


かおる:

ただの六角形じゃつまらないと思ったから。

茂喜:

立体をデザインしていると、直線をちょっと揺らしただけで、全体のイメージがガラッと変わることがあるよね。

かおる:

でも揺らしすぎると、和ではなくなる。微妙なとこよね。

茂喜:

そのときは亀とは決めてないでしょ。

かおる:

そうそう。

茂喜:

揺らしてみたら、あ、亀だ。

かおる:

じゃあ、脚も亀の足にしよう、ということになった。



箔絵「大銀杏」


「李の棚」

私たちが四角と思っているものの直線をちょっと揺らすこと、それはその物体をとりまく空気を振るわせ、私たちの脳にさざ波を起こす。

2人の自由で楽しい発想が、生活空間にそよ風を吹かせるのである。

文: 岡崎 保



「流」と「いちょう」

へぎ箱

へぎ箸

銘々膳「ひとひら」(箸置きは乾漆)


木漆スタジオ温展

2003年1月8日(水)から1月18日(土)まで、東京・北青山の「オムニクギャラリー」(TEL 03-5466-0639 場所は「個展ピックアップ」参照)で開かれている。時間は12時〜19時(最終日は17時まで。会期中は無休)。


木漆スタジオ温(おん)について
工藤茂喜、かおるさん夫妻は、ともに東京芸術大学工芸科を卒業。茂喜さんは木にこだわった家具や室内装飾(今回の展示品では「李の棚」「へぎ箱」)を、かおるさんは動きを追求した絵画や立体(今回の展示品では箔絵「大銀杏」や「ひとひら」)を制作してきた。
しかし、漆のよさを普及するためには、個々の作家活動だけでは弱いと感じ、2年前にユニットとしてのスタジオ温を立ち上げた。古典的な技法を駆使して現代的な感覚を表現し、生活の中に漆を取り戻すのが狙いだ。具体的なアクションとしては今回が最初だが、今後は、例えばスタジオ温の「大お椀展」など、ジャンルにとらわれずに活動を広げたいという。
企画、デザイン、制作、すべて2人で話し合いながら進めるが、今回は鉄の部分を金属造形作家の坂本武人さんに依頼した。
漆の世界では、注文から納品まで1年などというのはざら。工藤さんたちはそのへんにも疑問を感じている。拭き漆の家具を主体とした今回の展示品は、1ヵ月もあれば納品できるという。

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