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展覧会見て歩き

自然の流れ 山本進也 漆作品展


1年半ぶりに山本さんの展覧会を取材した。何にも変わっていなかった。(参照: 前回の取材)

断っておくが、「何か変わっているのではないか」と期待して取材を申し込んだわけではない。逆である、何も変わっていないことを確かめたかったのだ。




重ねの器



三段重

山本さんの器に囲まれていると、何だか心がゆっくりしてくる。

話を聞かなくちゃ、取材しなくちゃ、失敗しないように撮影しなくちゃ・・・、そういう「・・・なくっちゃ !」という気持ちが薄くなる。

塗りっぱなしの、何でも許してくれそうなやさしい肌を持つ器たち、そこに描かれた野菜の絵は、愛らしいのに、不思議な静かさに満ちている。それをもう一度確かめたかったのだ。



ぐい呑みと角切長手皿

「ぼくらの仕事って、発想から作品ができるまでが長いんですよ。

正月に、これだ ! とひらめいても、暮れの展覧会には間に合わない。だから1年や2年じゃ変わりません。気の長い話ですよ。

そこの茶托なんか23年前からずっと作っていますからね。じゃあ、全然変わらないのかというと、そうでもない。同じものを同じように作っていても、今年描いたものと、来年描いたものは、多分違うでしょう。

ま、自然の流れですね」

荒挽きの皿

山本さんは入ってきたお客さまの質問に答えて、

「漆器は縁などを麻布で補強しますが、木目を残したい場合、ぼくは和紙で補強しています」

などと丁寧に説明しているのだが、こちらは細かい技術的なことを質問しようなどという気は、もう失せている。山本さんのことだから、中身は完璧に違いない。

そこで、取材用のテープを止め、カメラをしまい、あとは山本さんの作品をちらちら見ながら、よもやま話をするだけである。



銀杏の器

山本さんは木地から全部一人で作る。木はもちろん製材所から買うが、今回、自分の家の木で作ったものがあるという。
「うちに大きな銀杏の木がありましてね。これが、枯れ葉が近所迷惑だっていうんで、切ったんですよ。30万円もかかったんですよ、切るのに。

そしたら、木の中にクギが何本か刺さっていて、ノコギリの刃が欠けたんですよ。つまりね、まだ太くなる前に、誰かがクギを打ったんですね。木はそれを呑み込んで成長した。だから木の中からクギが出てきたんです。そういうことは、よくあることらしいです。

その木で作ったのが『銀杏の器』なんです」


スプーンと板皿

何を作っているときが楽しいか聞いてみた。

「強いていえば、スプーンなんかは楽しいですね。自分で形を決められますから。

ただ、ものすごい手間がかかるんです。手間だけでいったら、1本数万円の値段をつけても合わないでしょう。それじゃあ売れないから、10分の1ぐらいの値段にしています。

だから、とても追加注文には応じられません。現品限りということでお願いしています」

漆絵椀

山本さんは西伊豆に住んでいる。気候は温暖だが風が強いのだそうだ。

「ぼくの家は古い二階家なので揺れますよ」

という。今日もその家で、山本さんは自然の流れに逆らわずに、漆器を作っているだろう。

文: 岡崎 保



松花堂弁当

山本進也 漆作品展
2002年11月20日(水)から11月27日(水)まで
宗平ぎゃらりー 埼玉県東松山市箭弓町1-1-1 (TEL 0493-24-8000)で開かれている。
営業時間は11:00〜19:00。最終日は17時まで。


山本進也(やまもと・しんや)さんのプロフィール
1947年 静岡県西伊豆町に生まれる
1974年 東京芸術大学大学院修了
1975年 西伊豆の実家に工房開設。以後各地で個展開催
現在、日本クラフトデザイン協会会員

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