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合鹿椀
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角さんが若い頃は、アンディ・ウォーホールをはじめとするニューヨーク・ アート全盛の時代だった。角さんもオブジェやパネルを作るアーチストであり、展覧会でもたびたび入賞している。20代の終わり、角さんは「漆をやっていながら、さわれないものばかり作っている」ことに疑問を感じるようになった。そんなとき、何人かの漆の作家を訪ねて気がついたことがある。どこの家にも合鹿椀(注)があるのだ。古い合鹿椀をみんな大事に使っている。しかし、本人が作るのはきらびやかな輪島塗の作品なのだ。「これはいったいどういうことだ」。疑問が合鹿椀への関心につながった。
さわれるもの、日常のものに関心が向くと、木地からやりたくなる。32歳で角さんは木地屋に弟子入りした。しかし、これは2カ月しか続かなかった。
「私の挽く椀には主張があったんですわ。オブジェと同じです。年に数回使う分にはいいかもしれませんが、毎日使うのはかなわない、そういう器だと気がついたんです」
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曲輪五段重
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こうして、土の中から生まれ出てきたような、無骨でケレン味のない角さんの器の世界が形作られてきたのである。
「器というのは料理を盛りつけてはじめて完成するんじゃないですか、とある人にいわれました。確かに、器それ自体で見ると、何かが満たされていない。別の要素が入ってはじめて完成するというところは、アートとはずいぶん違うと思います」
取材の前日に、《角さんの器に有元葉子さんの料理を盛って食べる会。》が開かれた。料理研究家の有元さんが角さんの器の大ファンなので、こういう企画も可能なわけだが、それはともかく、角さんは自分の器が「料理を盛るとこんなに元気になるのか」と驚いたという。そんな話を聞きながら、改めて角さんの器を見ると、なにやら食欲がうずいてくる。この椀には真っ白なお粥を入れ、真ん中に梅干しを一つ置いてかきこんだらうまいだろうな、などと想像を逞しくしてしまうのだ。
短時間お会いしただけだが、角さんは、角さんの器にそっくりだと思った。
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大盆と練金分合鹿椀
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(注)合鹿椀(ごうろくわん)
高台が高い大ぶりの椀で、素朴で力強さが珍重される。もともとは石川県鳳至
郡柳田村合鹿で発見された椀の形なので、この名前がある。本物の合鹿椀は、
口の欠けやすい部分は藤づるで編んだ布を漆で貼り、地漆を塗った黒い椀で、
現存品は少ない。
「角 偉三郎の漆展」は2001年5月13日(日)まで、神奈川県小田原市の「うつわ菜
の花」(TEL0465-24-7020)で開かれている。11:0〜18:00 水曜定休。
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