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改めて思い知らされる漆の可能性
「うるしを使ってみませんか! 〜造作・家具・器〜」


展示風景

漆って、すごい。桐本さんの展覧会を見て、改めてそう思った。思わず「展覧会」と書いてしまったが、輪島・桐本木工所の商品展示会、あるいは商談会といったほうがふさわしいかもしれない。この催しの好ましさは、そこにある。

桐本泰一さん

展示品は1200ミリ×1200ミリの壁面・天板用サンプル、飾り棚などの家具、そして器などである。圧巻はやはり大きなパネルや天板用サンプルだろう。拭き漆で木目を生かしたもの、荒い繊維の和紙を漆で重ね張りして力強い表情を出したもの、布の表情を使い分けたもの、いずれも初めてお目にかかる漆の「顔」である。しかも、同じ拭き漆でも、鉋(かんな)仕上げに漆を塗るか、サンドペーパーで仕上げて漆を塗るか、それによっても表情はがらっと変わる。まさしく千変万化だ。

私たちは漆イコール漆器だと思い込んでいるフシがある。しかし、それは漆の一面に過ぎない。本来漆は木を腐らせないために塗られる。木を強く、長持ちさせるために塗られるのだ。だから建材としても、家具としても、極めて有用である。

同形の飾り棚を、白木と漆を塗ったものを並べて展示

焼き桐の天板用サンプル
マニラ麻をメッシュに編んだ「アバカ麻」と日本の麻の表情を組み合わせた天板用サンプル
四方片口と猪口
同形で、大小をつけた器

「いままで漆はまるで殿様のように崇められてきました。高度成長経済とバブルが漆を高級美術工芸品にしてしまったのです。特に輪島はそういう道を歩んできたと思います。それを非難しているのではなくて、私は木地屋、木工所ですから、作り手として、もっと木に漆を塗ってほしい、内装や家具にも漆を使っていただきたい、それをアピールするのを怠っていたという反省があるのです。今回の企画は新鮮に受け止めていただいているようですが、でも、何も新しいことをやっているわけではないんです。もともと漆が持っている特性、よさをきちんと伝えてこなかっただけなのです。漆の可能性を知ってもらいたくて始めたことです」

確かに和紙に漆を塗る技法には一閑張りがあるし、布を使うのは漆器ではごく普通のことである。では創意工夫などないのかといえば、そんなことはない。むしろ創意工夫だらけといったほうがいい。

たとえば会場に入ってすぐの場所に展示された黒い天板である。焼き桐という木工の技法と蒔地という漆の技法がドッキングされている。ひとつひとつの技法は新しくなくても、それを組み合わせることが新しいのである。また、同じ飾り棚に一つは漆を塗り、もう一つは白木のまま、並べて展示してある。いってみれば使用前、使用後みたいなものだが、漆とは何かが一目瞭然である。

桐本さんが輪島の朴木地屋の3代目として生まれたこと、大学で工業デザインを学んだこと、漆がいま苦境にあること、そういったもろもろのことが、桐本さんに漆の可能性を開かせようとしている、といえるだろう。これは漆にとっても、私たちにとっても、幸運なことである。

「いま木目が印刷された板が、住宅などによく使われています。それはそれできれいだし、安いし、すばらしいと思います。ただ、本物を忘れてほしくない。しかも漆は、木の材質によって、加工の仕方によって、あるいは異素材を組み合わせることによって、こんなにもいろいろな表情が出せる。この会場のように、ビルの中にだって、うるおいのあるスペースをつくり出すことができる。それをいいたかったのです」

いくつかの商談が成立し、問い合わせも個人、企業を問わず、多いという。桐本さんは手応えを感じているようだった。

「うるしを使ってみませんか! 〜造作・家具・器〜」は2002年3月28日から4月9日まで、東京の新宿パークタワー6階「リビングデザインギャラリー」で開かれた。

岡崎 保 okazaki@japan-urushi.net

桐本泰一(きりもと たいいち)さんのプロフィール
1962年 石川県輪島市に生まれる
1985年 筑波大学芸術専門学群生産デザインコース卒業
コクヨ(株)意匠設計部入社
1987年 輪島朴木地工芸 桐本木工所入社
朴木地職見習いを経て、木地屋からの創作漆器デザイン提案や
木地屋が想う漆の創作を始める。現在も活動を継続中
1993年 「国際デザインコンペティション・石川」ほかで入選
1996年 個展「漆の考現楽」。以降、個展、グループ展を中心に活動
2000年 輪島市河井町わいちに、地元の木地師、塗師、蒔絵師たちと「ギャラリーわいち」を開店
『プロダクトデザインの広がり』を共著出版
2001年

「石川県デザイン賞」受賞

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