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独楽盆(尺4寸)(治作)

三代の重みがもたらす深い味わい
「村瀬治兵衛・治漆芸父子展」


草紋合鹿椀(治作) 葉紋合鹿椀(治作)
沢栗一文字膳(治兵衛作)

見る側からいわせてもらえば、「父子展」という形式には独特の楽しさがある。純粋な作品鑑賞に加えて、子がどのぐらい父親の技量に近づいたか、「まだまだ、だな」とか「ほう、ずいぶん腕を上げたじゃないか」などと、わかりもしないくせに比較する下世話な楽しみが増えるからである。そして「父子展」の何よりもいいところは、まだまだでも肉薄していても、どちらも楽しいことである。 「技術的には近づけたと思います。でも、なぜか父のほうが人気があるんです」

子である治さんの判定だが、この答もほほえましくて楽しい。

ヘギ縁高溜備州ヒノキ
村瀬治さん

この秋、治さんは三代目「村瀬治兵衛」を襲名するが、村瀬家は代々名古屋の木地師だった。初代(治さんの祖父)が、もっと荒々しい漆器を作りたいと思い、木地だけではなく絵つけまで自分で手掛けたのが最初だ。そして苦労の末に東京に居を移す。

戦後の混乱期を乗り切ったのが、治さんの父上である現在の治兵衛(2代目)である。初代に比べ「きれいで、華やか」な作風と治さんはいう。そして、治さんはどうか。「ちょっと初代のほうにもどっている」とはご本人の弁だ。いずれにしても木にこだわり、分業はせずに木地から塗りまで一貫して一人で制作するのが「村瀬治兵衛」の特徴である。

独楽水次(治兵衛作)

「若い人に椀ひとつでもいいから、毎日使える漆器を持ってもらいたい。講義 を聞いたり、本で勉強するより、実際に毎日使うのがいちばんなんです。そのためにギリギリまで価格をおさえてあります。毎日使って木のよさ、漆のよさ を知ってもらうためには、こちらもあやふやな仕事はできないということです」

襲名を目前に控えている現在でも、出品点数の6割は父上の作品である。茶道具は父、食器は子という分担のようなものが、父子展では自然にできあがっている。

根来塗菜桶蓋付(治兵衛作)

最後に、すごく興味をそそられる話を紹介したい。

治さんがある程度仕事ができるようになると、父と子は一緒に仕事をしなくなったというのである。お互いにやりにくいらしく、避けるというか、相手がいないときに仕事をするというのである。幸田露伴「五重塔」みたいな話だと思いませんか。

「村瀬治兵衛・治漆芸父子展」は2001年4月14日(土)まで、名古屋市中区栄のサン・ギャラリー住恵(・052-263-4021)で開かれている。日・祝祭日は休み。 11時から19時まで。最終日のみ17時で終了。

村瀬治兵衛(むらせ・じへい)さんのプロフィール
1927年 名古屋市に生まれる。本名喜三郎
1945年 愛知県立工業学校図案科卒
1948年 愛知県商工会議所展出品特賞受賞
1951年 東京に転居
1964年 木地師として六代目を継ぐ
1976年 二代目治兵衛を襲名
1989年 三越本店にて父子展
村瀬 治(むらせ・おさむ)さんのプロフィール
1957年 東京都に生まれる
東京造形大学彫刻科を卒業の後、家業に従事
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