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キーワードはフラクタル
「大蔵達雄展」
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恋文箱
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大蔵さんが村瀬治兵衛さんのところで修行したと聞いて、あっ、と思った。
先週、三代目を継ぐ村瀬治さんにインタビューしたばかりだったからだ。大蔵さんが師事したのは二代目、つまり治さんのお父さんで、少し年下の三代目を大蔵さんは「治ちゃん」と呼ぶ。こういうことがあるから取材前の下調べはきちんとしなければならないのである。反省とともに冷や汗が流れた。
そういわれて展示された作品を見直すと、なるほど「治兵衛」の根来である。ただ、割ったままの木肌、ゴツゴツした面取り、手斧(ちょうな)の削り跡を活かした造形など、全体として豪放磊落な印象を強く受けた。
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今回のテーマは? と型通りに質問すると、大蔵さんは考え込んでしまった。そこで質問を変え、最近はどんなことを考えながら製作していえますか、と聞くと、即座に「フラクタル」という言葉が返ってきた。今度はこちらの頭がフラクタルになってしまった。
要するに不定型とかシンメトリーじゃないとか、そういう意味らしい。「用の美とか、よくいうじゃないですか。もう飽きてしまって、いまさらいいたくはないという気分なんです。フラクタルなものは、いままでも漠然とやってはいたんですが、理論はなかった。『フラクタル造形』など関連の本を2、3冊読んで、これだ!
と思ったんです。それ以来、勝手にフラクタル、フラクタルといってます」
さらにフラクタルの解説をねだってみたが、大蔵さん自身「まだ、こなしていない」「言葉ではうまく説明できない」を連発する。そこで実作について見たほうが話が早いだろうと思い、今回の作品で、フラクタルをよく表現できたと思うものをあげてもらった。それが面取鉢である。
正円ではない。縁もたわんでいる。不規則な面取りと根来独特の地肌模様が力強い。フラクタルとはいいながら、使いやすそうである。というより、用の美などという手垢のついた表現がいやなだけで、フラクタル=使いにくさということでは無論ない。大蔵さんのフラクタルが少しわかった気になった。12月に新宿で椀だけの展覧会を開くそうだが、それを見れば、さらに「フラクタル」なるものに肉薄できるだろう。
今回の展覧会の案内状には「恋文箱」の写真が使われている。栗の木を割ったままの、いわゆるヘギ目が美しい。冒頭に大蔵さんの作品の印象を豪放磊落と書いたが、それはそのまま大蔵さん自身の性格でもあるとお見受けした。しかし、この文箱を「恋文箱」と命名するあたりに、ひとすじの純情を見るのはうがちすぎというものだろうか。
「大蔵達雄展」は2001年10月19日(金)〜10月28日(日)まで、東京・目黒区の美土里(TEL03-5486-3152)で開かれている。11時〜18時30分、最終日は17時まで。
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| 大蔵達雄(おおくら・たつお)さんのプロフィール |
| 1952年 |
長野県南木曽の木地師の家に生まれる |
| 1972年 |
上京して根来塗の村瀬治兵衛(2代目)に師事するとともに、東京デザイナー学院工芸工業科で学ぶ。卒業後、岩手県浄法寺町で漆掻きを習得 |
| 1976年 |
家業の木地挽きものに従事 |
| 1982年 |
伊豆に工房を構えて独立 |
| 1988年 |
渋谷で個展。以後各地で開催 |
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