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会場を歩いていて、いいようのない安堵感をおぼえた。まるで揺りかごにでも乗っているようだった。なぜだろうと考えたのは会場を出てからのことだ。会場にいる間は、形の面白さに夢中になり、自分が幸福であることも忘れていた。
展示された作品のどこにも角というものがないのである。「四方膳」と銘が書いてあっても、長方形にはとても見えない。縁が山のように、あるいは波のように立ち上がっている膳である。楕円の片口がある。なぜ円ではないのかという疑問は浮かばない。いままで見たことのないフォルムなのに、見た瞬間、すでに受け入れているからだろう。
わずかに溜塗があるものの、ほとんどが朱か黒の器である。加飾もない。このシンプルさがフォルムの魅力を引き立てるのである。
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食卓のしつらい(ディスプレイ完成前) 真塗まゆみ花器を中心にして 真塗四方膳を配する。膳の上には真塗小吸
物椀、朱塗州浜銘々皿、右端に内銀片口が見える。 |
「ぼくの器は盛られた料理が加飾なんですよ」
同じことは器の重さにもいえる。鈴木さんの器は限りなく薄く、軽い。料理が盛られたとき、酒が満たされたときのことが、鈴木さんの頭の中にあるのである。
また、持てるだろうかと不安になるような大きな鉢があるかと思えば、手のひらにおさまって喜んでいるような盃もあり、作品の大小の差がかなり激しい。これは鈴木さんが素材主義だからである。大きな木はもったいないから
「いっぱい、いっぱい」に使いたいだけなのだ。
意外な軽さや素材の温かさは、フォルムに目を奪われていると忘れがちだが、大切なことである。鈴木さんが「持ってみて」と盛んにすすめたわけが、納得できた。
曲線による平安の雅びの世界が展開されている、ともいえるし、規格化されたフォルムを逃れた、きわめて現代的な感覚の漆器たちともいえる個展である。
なお、鈴木さんのインタビューを別に掲載しました。あわせてお読みくださ い。略歴はそちらに譲ります。
「鈴木睦美漆器展」は2001年5月26日(土)から6月2日(土)まで、銀座4丁目 ・和光(TEL03ー3562ー2111)6階の和光ホールで開かれている。営業時間は10:30〜18:00。最終日は17:00で閉場。日曜定休。
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