|
汁椀がある。合鹿椀がある。盆があり、重箱がある。全部で100点あまり、奇をてらわない、どんな食卓とも相性のいい器たちである。
山本さんはいつも「この器にはどんな料理が似合うだろうか」と考えながら制作している。
今回、前から作りたいと思っていたという 飯椀が展示されている。「漆塗りのお椀は、ご飯をおいしくするんですよ。黒い椀に白いご飯、想像してみてください」と山本さんの顔がほころぶ。
山本さんは芸大に入るとき、工業デザインを目指していた。しかし、性格的に一人でやる仕事が向いていると気づく。デザインはチームワークの世界である。また、もともと木を使うのが好きだった
。学生時代、木型屋さんや家具屋さんでアルバイトをしていた。だから、木地を挽くところから全部自分でこなす。「木地だけ、塗りだけという仕事は、飽きちゃってできないでしょうね。そういう仕事はどこまでいっても完結しない。全部自分でやるから、達成感が
得られるんでしょう」
器には素朴で愛らしい野菜の絵が描いてあるものが多い。型紙に色漆を置き、いわゆるステンシルの要領で絵付けをする。それを何版か重ね、最後に筆で仕上げるという手法だ。なぜ絵を付けるようになったのかを聞くと、「漆の椀はみんな同じ形で、自分のも、ひとのも区別がないでしょう。だから絵を描いて、これは自分専用とかにしたらどうかと思ったんです。そのうち遊び心がわいて、いまは楽しみで描いてます」
西伊豆の工房のまわりには畑があって、野菜を作っている。それをモチーフに絵を付け、その野菜を料理して、自分の器に盛る。最高の生活ですね、というと「あとはお金があればね」と笑う。
会場の奥に、どっしりとした三段重ねの重箱がある。カブやタマネギの絵がこの重箱を、いわゆる正月専用のとりつくろった重箱と
は別種の器にしている。それは派手な加飾のあるなしの問題ではなく、精神の問題である。自然の中からほっこり生まれてきたような器たちだった。
「山本進也うるし展」は2001年6月17日(日)から6月23日まで、東京都板橋区板橋2-45-11
の瑞玉ギャラリー(03-3961-8984)で開かれている。
営業時間は10:00 〜 18:00。最終日は17時まで。山本さんの在廊日は18、22、23日。
|