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Vol.1 「鈴木睦美作・曙塗六方大平鉢」
初めて京都高島屋美術画廊で展覧会をした時、直径45cmの蓋物の器を作り、木地が狂わないかと心配で、連日連夜漆を乾かす室(むろ)の前にいた事を覚えている。

大きな器を作る事は実に楽しく、展覧会毎に寸法が大きくなり、1991年に作ったこの器は、畳の上におけば畳が小さく見える程だった。
この作品は大きな欅の原木(丸太)の出逢いから始まり、約4年かけて仕上げた。友人の材木商に、宮崎県小林産の一番大きな欅で漆に適した木を求めた。彼は探しあて私の家に持ってきた時、欅がトラック一杯に見えた事を思いだす。

京都の挽物の名人、西村直木氏に頼み、ロクロにかけ形を出していくのだが、直径95cm厚み25cmの大きな木の固りは120kgあり、大人2人では到底持ち上がらなかった。時間をかけ木地全体をボール紙の厚みまで薄く挽いてもらった。西村氏から仕上がった木地を受取ったとき、重さ1kgとなった木地は、空気を持った様に軽く、一生忘れられない。

器の形を出す為に元の重さの1/100以上にまで削り、そのほとんどを木屑にしてしまう私の仕事は本当に贅沢な仕事と思う。

無我夢中で仕事を進めたが、木地が薄い為ボール紙が水分を含めばあばれる様に、木地もあばれ、あらゆる所で凹凸が生じ、元の正しい線が探しても見つからない程だった。凸の所は木を削りとり、凹の所は漆でうめ、面を平に作り、何度も何度も研ぎすえ形を作り上げた。

題名の「六方」とは、木地師から受けとった時にはロクロ挽きの正円だった形を、木地が薄い為に、形を六方に変化させることが出来た。又「曙塗り」の意味は、私が早朝まで仕事をしていると東の比叡山の方向から太陽が昇り、比叡山の稜線が美しく曙になるのを見て、中塗に朱漆を塗り、上塗りに透ける漆と黒漆をまぜ塗り、上塗りの下からほんのり朱が見える様に考えた。

直径93cmの漆の器は、古今東西最大の器と思う。海苔を巻いたおむすびをこの器に山盛りに盛りつけ、友人を招き食べ終った後、お酒一升をなみなみと注ぎ、全員で廻し飲みをしたら一生忘れられない想い出になる。楽しい器と思う。

鈴木 睦美




鈴木睦美 略歴
主な国内個展
1975年 京都高島屋(以降78・83・86・88・91・94・2000年)
1995年 銀座和光ギャラリー(以降95・97・2000年)
1996年 南青山酉福(以降98・99・2000年)
2000年 「うつわをみる」展出品
(東京国立近代美術館)
2001年 「京都の工芸」展出品
(東京・京都国立近代美術館)
主な海外展示及び展覧会

ストックホルム国立東洋博物館
コペンハーゲン王立工芸博物館
ブリュッセル王立歴史博物館
ケルン市立東洋博物館
シッツトガルト州立リンデン博物館
ロンドン ヴィクトリア&アルバート博物館
台北市立美術館
オックスフォードアシュモリアン博物館
フランクフルト工芸博物館
サンフランシスコ東洋博物館
ジゼルクローエギャラリー(ブリュッセル)
E&Gフランケルギャラリー(ニューヨーク)
メトロポリタン博物館
メキシコシティー現代文化センター
ハンメリンナ美術館
ほか

作品収蔵
ニューヨークメトロポリタン博物館
ニューヨーク近代美術館
サンフランシスコ東洋博物館
ロンドン ヴィクトリア&アルバート博物館
ストックホルム国立東洋博物館
宮内庁
ほか10の博物館

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