ジャパンうるしネット うるし美し、日本の心

コンテンツ一覧
トピックス
展覧会開催一覧
展覧会見て歩き
うるしの学校
うるしの人 (インタビュー)
うるしのエッセイ
うるしクッキング!
私の好きな私の作品
BOOK'Sレビュー
リンク集
バナー広告掲載案内
お問い合わせ
現代工芸ギャラリー 酉福
やきものネット 陶磁器・陶芸の総合情報サイト
ジャパンうるしネットのバナー 自由にお使いください

ジャパンうるしネット www.japan-urushi.net/

「国際漆展・石川2002」審査結果発表!
大賞は「溜II――存在する闇 内包する光―より」に決定

左から栄久庵、大西、白、小松、
樋田、船曳、クリステンセンの
各審査員

9月6日、石川県地場産業振興センター(金沢市)で「国際漆展・石川2002」の審査結果発表会および講評会が開かれた。入賞作品の発表と大賞、金賞、銀賞を受賞した作品の展示、7人の審査員の講評、さらに交流会も行われた。


「国際漆展」は3年に1回開かれる世界で唯一の誰でもが参加できる漆の国際公募展である。今回のテーマは「新しい美と認識の広がりを求めて」。漆をさまざまな縛りから解放するのがねらいだ。芸術、工芸、クラフト、デザイン、そういう従来の発想を超えた新しい表現、伝統を守るという意識を超えた挑戦、漆はアジアのものというイメージを超えた、広く世界からの提案を求めようというわけだ。したがって応募の制約はほとんどない。漆がほどこされていること、バカでかくないもの(縦、横、高さの合計が210センチ、重さが50キログラム以内)、すでに発表されている作品、流通している商品でもかまわない。

第6回の今回は、応募総数193点。内訳を見ると、海外からの応募が14カ国123点で、国内の70点を大きく上回っている。スライド審査を通過したのは国内37点、海外66点で、これも海外作品がはるかに上回っている。国際公募展の面目躍如である。

大賞-石川県知事賞
大塚智嗣「溜II―存在する闇 内包する光―より」

大賞の石川県知事賞に選ばれたのは大塚智嗣氏(広島県)の「溜II―存在する闇 内包する光―より」。

この作品は90センチ×90センチの壁面パネルで、塗っただけで研かない「塗立」という技法で仕上げられている。したがって鏡のように反射する光沢ではなく、しっとりした吸い込まれるような表面になった。また、中央の凹みは不思議な波動で周囲の空気を震わせる。

金賞-金沢市長賞
崔榮根「BEYOND THE LIGHT」

金賞-金沢商工会議所会頭賞
鄭炳晧「A CASE OF NAMTAE LACQUERED MOTHER-OF-PEARL」

一方、金賞の金沢市長賞を受賞した崔榮根氏(韓国)の「BEYOND THE LIGHT」は卵殻(らんかく)という技法を駆使した、現代感覚あふれる65センチ×100センチの壁面パネルだ。卵殻とは、読んで字のごとく、卵の殻を適当な大きさに割って貼り付け、上から漆を塗って研ぎ出す技法だが、白の細かい斜線が見る角度によってさまざまな虹をつくり、シャ-プでしかもファンタスティックな作品になっている。

もう一つの金賞「金沢商工会議所会頭賞」は、やはり韓国の鄭炳晧氏の作品で「A CASE OF NAMTAE LACQUERED MOTHER-OF-PEARL」が受賞した。これは籃胎(らんたい=編んだ竹に漆を塗る技法)の大中小の箱だが、漆を極めて身近に感じさせ、漆を生活に引き戻そうという思いが沸き起こってくる作品として評価された。

審査員の講評はいずれも漆への思いがあふれるものだった。一言ずつ紹介しよう。(席順=発表順)

栄久庵憲司氏(工業デザイナー)
大賞の作品は谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」をそのまま形にしたような、非常に大胆な試みだと思います。完成というより、ここからさまざまな展開が可能で、今回のテーマにピッタリです。伝統というものは未来を十分受け入れるもので、姑息だったり呪縛したりするのが伝統ではないのです。漆の伝統も未来に手を広げている、それを感じさせてくれる作品が多かったことは、我々の運動に自信を持たせてくれました。

銀賞-輪島市長賞
春名淳一「芳生」

銀賞-加賀市長賞
李せい娥(※)「いのち(宝石箱)」

銀賞-山中町長賞
福原栄子「ラ・メール(海)」

銀賞-石川デザインセンター理事長賞
ストルゴー・フォグ・エルゼマリー
「A SET OF CANDLESTICKS, A MALE AND A FEMALE」

大西長利氏(東京芸術大学名誉教授)
大賞作品は、今回の収穫です。塗立だからこそ漆の魅力を引き出すことができたので、研いたら漆は変質していたでしょう。ここには空気の波動があります。従来の漆は手をかけすぎて、波動を封じ込めていました。作者は多分、自分の漆を見つけたのでしょう。それが伝わってきます。これとは対照的なのが「BEYOND THE LIGHT」です。目を近づけて見るのではなく、少し離れて見てください。卵殻の白と漆の黒のラインが響き合い、揺らいでいます。それを鑑賞してください。漆は液体です。それだけでは形になりません。形になるものが必要です。私は漆と形の接点が重要だと考えています。それはつまり漆と人間ということでしょう。それを具体的に示してくれた作品が多かったのはうれしいことでした。

白泰元氏(韓国中央大学校芸術大学名誉教授)
韓国ではミシンに螺鈿を施したりします。私は「ミシンは機械ですか、家具ですか?」とよく質問します。私はミシンは機械だと思っているのです。そうだとすると、ミシンに螺鈿をしても機械は機械で、美術ではないのではないか。工芸品は使うのが先ではないでしょうか。また、韓国の螺鈿は、貝殻と漆の塗り面積を比べると、ほとんどが貝殻で、塗りが見えないぐらいです。世界中の螺鈿の貝殻を韓国が買い占めたという噂もある。紙いっぱいに描いちゃいけません。点ひとつ、線一本で紙全体を表現するのです。今回も韓国の作品が上位にたくさん入賞し、うれしく誇りに思いました。

小松喨一氏(金沢美術工芸大学名誉教授)
日展も伝統工芸展もいいけれど、もっと自由に漆を世界に広げるというのが、この展覧会の根底にあります。応募作品は海外からの方が多く、作品の内容を見ても国境がなくなってきました。たとえばデンマークから出品され銀賞を受賞したキャンドルスティックを見てください。我々の漆とはちょっと違うかもしれないが、北欧の環境に漆が成立することがよくわかります。アートだとか生活文化だとか、あまりそういうことにはこだわらないで、新しい概念を自分でつくる、大賞作品はまさにそういう作品です。漆は他の工芸に比べて技術が非常に重要です。技術がないと思いが表現できません。だから、漆の作品には造形性だけではなく、哲学性が必要になるのです。「BEYOND THE LIGHT」に私はそれを感じます。

樋田豊次郎氏(京都工芸繊維大学助教授)
私は多くの作品が「埋め戻し」の作業をしているような気がしました。他の分野同様、工芸も西欧に学び機能性を追求してきました。しかし、それがなんだか行き詰まって、手に入れた機能を土の中に埋め戻しているように感じるのです。我々のDNAに入っている感性を作品の中に埋め戻している。それを大賞の作品にも感じます。私は少しぐらい気持ち悪くても主張のある作品が好きですが、漆については心地よい作品を選んでしまいます。なぜかなあと考えていたのですが、漆は液体で、人間の体液に似ているのです。だから心地よいものがいい。それを忘れないでほしいと思いました。

船曳鴻紅氏(東京デザインセンター社長)
私は下世話な話をします。つまり漆の市場についてです。いま文化教育を重視しようという動きが、主に外国から帰っきた人たちの中から生まれています。世界で負けないためには、しっかりした文化を身につける必要があるからです。デパートなどでも「和」の見直しが盛んに行われています。日本の塗装技術は世界一です。海外で日本の商品といえば電化製品でしょう。電化製品に漆を塗れないか。マウスに漆は塗れないか。そしてもう一度「ジャパン=漆」にならないか。そんなことを考えています。ではこういう話と、たとえば今回の大賞作品は関係ないかといえば、まったく逆です。高みがなければすそ野も育ちません。美意識がなければ産業も活性化しないのです。

ヨーン・スコーウ・クリステンセン氏(デンマーク国立工芸博物館副館長)
ヨーロッパでも漆はよく知られています。漆は世界の宝です。しかし、漆を守れるのは、長い間漆を守ってきた日本人にしかできないでしょう。私は北欧の人間なので勝手なことをいいますが、日本人には漆を守っていく責任があると思います。クラフトは世界で生まれ、その国に合わせて変わっていくし、それでいいと思います。漆がクラフトと大きく違うのは、一日仕事ではできないということです。だから、そこに哲学や生き方が入っていくのです。私は二つのことを提案したい。まず、基本的に伝統を守っていくこと。でも、漆とか塗りを広い意味でとらえること。博物館に置いてたまに見るのではなく、生活に取り入れていかなくてはなりません。この二つの方向で守り育てていく。金沢の責務でもあると思います。なお、表彰式は11月19日、展覧会は11月20〜25日に金沢市で行われる予定。

※李せい娥氏の「せい」は女偏に正ですが、WEB上では表記が不可能なためひらがな表記にしてあります。ご了承ください

Copyright 2000-2005 Yufuku Inc.