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いらなくなった食器を全国から回収。粉砕し、焼き直して、安心ですっきりしたデザインの食器として再生させる。名付けて“美濃リ食器”。──美濃焼産地で取り組まれているエコ・プロジェクト「グリーンライフ21(GL21)」の活動を追った。

(右の写真) 山積みされた不用食器。10月半ばに行われた「多治見茶碗まつり」で回収。今年は2日間で約10トンは集まった。カゴの後ろにあるのは粗めに砕いた状態のもの。



長谷川善一(はせがわ・よしかず)さんは「器の一生をデザインする」ライフサイクル・デザインを提唱し続けている。

再生食器「美濃リ食器」より、RCW & RCBシリーズ
2001年度グッドデザイン賞/エコロジーデザイン賞 受賞商品「あたたかな白」「おちついた黒」。機能的でシンプルなデザイン、1ピース500円〜2800円と求めやすい価格帯だ。

地球環境に本当の意味でやさしい焼きものづくりを


一一岐阜県セラミックス技術研究所 長谷川善一さんに聞く

 陶磁器は、一度焼いてしまったら土には戻れない。これがジョーシキだと思っていた。
 ところがそうではないのである。細かく粉砕し、陶土に20パーセントの配合で混ぜ合わせることで土に戻り、全く新しい焼きものとして生まれ変わり、第二の人生を送る……じゃなくて焼きものとしてカムバックできるのだ。
 土は、地球が気の遠くなるような長い年月をかけて作り上げてきた、限りある大切な資源。それを廃品から補えるというわけだ。2003年には、器のデザインという範疇を超え、このシステム自体がグッド・デザイン賞を受賞するに至った。環境問題が真剣に叫ばれている今、この「グリーンライフ21」プロジェクトは今後益々重要になってくるに違いない。

 美濃焼産地の企業や研究機関をメンバーとしている「グリーンライフ21」プロジェクト。その中心人物の一人である、岐阜県セラミックス技術研究所の長谷川善一さんにお話を伺った。

器の再生・循環

1 家庭や産地で不用になった食器を回収
2 粗粉砕したあと、その粉砕物を陶土に20〜30パーセントの割合で混ぜ込み、さらにミルと呼ばれる粉砕機で微粉砕
3 再生陶土に
4 その再生陶土をロクロや鋳込みによって成型、焼成
5 食器として製品化、販売
6 エコロジーな器として広く使用


地球にやさしい食器とは?

──地球にやさしい食器とは、どんな食器でしょう?

 資源の循環ということで、再生した土で食器を作るということが中心ですが、実はそれだけではありません。
 作る工程をできるだけ簡略化すること。
 形も丸くて、できるだけ作りやすくて、不良品が出にくいもの。
 下絵付も上絵付も極力しませんから、余分な資材を使いません。ということは上絵焼成しないですむ。
 その結果、多様な食ステージに合い、かつロングライフで使える食器が生み出されます。
 となってくると、スタンダードな食器でいいやないか、となってくる。地球の環境にできるかぎり負荷がかかりにくいもの、という発想ですね。

 でも食器というのは、作る時よりも、使う時の方が環境に負荷がかかっているのですよ。水や洗剤で洗ったり、ガスや電気を使ったりする。水とエネルギーの使用量がものすごく大きい。二酸化炭素の排出量で換算しても、作る時の9倍はある。
 ですから、一回の洗浄でパッと落ちる、洗いやすい形状。汚れの落ちやすい釉薬。持ち運びやすくて重ねやすい、食器棚にコンパクトに収まるもの、それなら食器洗浄機にも入れやすくなるはずだと。

 それは、車など他のアイテムに比べれば環境負荷はずっと少ないですが、食器は食器で、できるかぎり環境にやさしく、かつ魅力ある食器を作っていくというのが、これからの21世紀の課題ですから。で、こういうことをやっているのですよ。

──スゴイ、そこまで徹底しているとは!

 着色にしてもそうです。日本食品衛生法でその溶出が規制されている鉛とカドニウムを使わないのは当然ですが、鮮やかな赤・黄・緑等の発色に使われる疑わしい重金属類、そういったものは一切なくしてしまおうと。
 で、唯一安全だと言われている鉄だけを使って着色しています。鉄は焼きものの着色剤として愛されていて、淡い色から濃い色まで、様々な色を発色させています。
 作る時に有害物質を使わないことで、水や土壌、大気に対して有害なものを排出しないということです。

──いらなくなった食器を粉砕して、土を作っているだけではないのですね。

 そうそう!
 その評価が、2001年度のグッドデザインのエコロジーデザイン賞になっているのでしょう。全体の考え方のようなものが、勝負なっているのだと。
 今回、2003年度でもGマークを取ったのですけれど、それは新領域デザインという部門で出品しました。21世紀のビジネスを担うデザインやシステムに対して賞を与える部門なんです。

回収した不用食器



(株)山愛製陶所の加藤 健さんと、リサイクル食器の試作品について話し合う。「今度はこんなので行ってみようか」。


リ食器を分かり易く解説したパンフレット。 可愛いキャラクターによるデザインは、マウンテンマウンテンの山下浩平氏。

他の業界はリサイクル隆盛、それなら焼きものも!

──そもそも食器リサイクルを始めたのはいつから?

 1997年6月に、うちの研究所(岐阜県セラミックス技術研究所)の呼びかけで。
 焼きもの業界は自然素材の土を使っているから安心だということで、それまでさほど世の中で騒がれている環境問題を意識していませんでした。
 でも他の産業はほとんど、環境問題抜きにしては語れない、というくらいになっていますよね。例えばプラスティックはリサイクルに一生懸命ですし、繊維業界は古着が、製紙業界も古紙の回収が当たり前。自動車も環境をうたい文句にしたハイブリッドカーが出ている。
 世の中ではずっと、環境を意識した中での商品開発・企業活動が成り立っているわけです。不燃ゴミの有料化や、グリーン購入法(環境を配慮した製品を積極的に買おうとする法律)の制定など、世の中は確実に環境問題に向かっている。これじゃあいかん、ということで、始めたのがきっかけです。
 それで、美濃焼業界のメーカーさん、問屋さん、土屋さんなどがうちの研究所に集まって、勉強会を作ったわけす。

 それからずっと勉強会を続けて、実際に商品となるものを作って店頭に置いたのが1999年10月の横浜市の東戸塚にある某百貨店。ISO140001の認証を取得した(環境への取り組みが優良であることを認められたこと)最初の百貨店ということを記念して置いてもらったのですけれど、全然売れなくて(笑)。

 次が2000年2月の銀座・松屋。エコロジカル・ライフをテーマにしたイベントへの参加でした。本当にまとめて売り出したのが同じ年の4月、「大地」という関東圏を中心とした宅配業者さんが扱ってくださって。
 そのうちに、自動車や事務機器メーカー、外食産業など環境問題に積極的に取り組んでいるいろいろな企業が景品として使い始めてくださるようになって、本格化しましたね。

 テレビ、雑誌、新聞と随分取り上げてくださって、今では回収された不要食器が、南は石垣島から北は北海道まで、全国どこからか毎日のように送られてくるようになりました。

回収地点は全国に

――不用食器の回収地点は、全国で何か所くらいあるのですか?

 今は50カ所くらいです。常時やっている所、イベント的にやる所、街の企画としてやる所などまちまちですが。(地図はこちら)
 百貨店では東京・池袋の東武百貨店が一番早くから取り組んでいて、販売コーナーも常設しています。西の方では滋賀県の近鉄百貨店と大阪の大丸梅田店が、年に何回か回収と販売を。一番最近では名古屋の名鉄百貨店が一週間、回収と販売をしていました。

――どんな食器でもいいのですか? 磁器、陶器、いろいろな色のついたもの、割れたもの、欠けたもの……。

 どんなものだっていいのですよ。
 ただいけないのが、土鍋。直火でいいものは普通の食器と組成がちょっと違うのですね。
 それとボーンチャイナ。リン酸カルシウム分が焼成温度を通常より低くさせる。つまり他のものと一緒に焼いてしまうと、クシャッとなってしまう。
 一番間違われるのが、コレール。よく製パン会社が白い器を景品として出していますが、これは一見焼きものなのですが実はコレールで、ガラスなんです。ガラスは回収できません。

――集めすぎということはないですか? 余っちゃうとか。

 今のところ、通常の陶土に不用食器を微粉砕したものを、20パーセントしか混ぜていないのですよ。この状態では回収した分をとても消化しきれませんから、もっと配合率を高めるか、食器を作るのに使わなかった余剰分は食器以外のものに使うなど、今いろいろと実験をやっているのですけれどね。
 技術的には95パーセントだって可能なんです。でも、産地がビジネスとしてやっていこうと思うと、既存の生産ラインの他に、新しい技術開発をもとにした機械を作らないと、たぶん量産ベースにはいかない。
 現在持っている技術と設備で作れる割合、20パーセント、多くても30パーセントが、美濃焼産地のどこの企業でも、やる気になれば明日からでも参加できる割合なんですね。できるだけたくさんの企業が参加した方が消化できますし、環境循環型産地の形成を目指せるのではないか、というねらいがあります。

売り場に設置された不用食器回収ボックス

多治見市PRセンター(岐阜県多治見市創造館内)の「美濃リ食器」の売り場。アースカラーの土色を生かした心やさしい器たち。毎日の食卓で心おきなく使える工夫がなされている。5客(枚)セットなどで買っても2000円〜5000円位と財布にもやさしい器たちである。



ノブ プレート・ボウル・マグカップ 「美濃リ食器」より、フィンランド人デザイナー、カミーラ・グロスのデザインによるシリーズ。このプロジェクトに最も積極的に取り組んでいるメーカーである市原製陶(株)が製作を担当している。
ものの寿命がつきたあとまで責任を持つデザイン

──リサイクルをしているのは美濃焼だけですか?

 有田焼が2000年頃から視察に来るようになって、今は実際にリサイクルを行っています。まだ一般回収まではしていなくて、産地の中で発生した不良品をもう一度原料として使う段階ですね。本当だったら埋め立てゴミに持っていくものを、原料化しているのですよ。
 それと、最近始めたのが瀬戸。今年の12月の発表を目指して頑張っているはずです。
 信楽は商品化はしていませんが、研究所レベルで、早くから研究をしていました。
 一つの産地でも二つの産地でも同じふうにやってくれた方が、やきもの業界のためになるし、美濃焼の刺激にもなるし、より環境をテーマにした食器作りが成長していくと思うんですよ。皆さんこれからの時代をにらみながら、原料が枯渇化して行っている状況と合わせながら、環境のことを考えているのでしょう。

──土の枯渇化が気になるのですが……?

 ひどい状態かは分かりませんが、一番枯渇しつつあるのは粘土だと思いますね。美濃焼の産地で言うと、蛙目粘土や木節粘土。
 これは美濃で一番大きな粘土鉱山を持っている人の言い分ですけれど、バブルの頃のように毎日生産していたら、とうに閉山になっていました、というのですよ。需要が下火になったから、今はもっている。でも節約してあと20年かな、と。
 それと、海外からカオリンなどをどんどん輸入しているということは、それだけ物流エネルギーがかかっているということですよね。できたら、できるだけ産地の近くで調達した方がいい。

──ますます食器リサイクルにはげまないと。

 ゴミの埋め立て地の延命化にもなりますよね。不燃ゴミの10パーセント近くが食器だと言われていますから。いろいろな廃棄物業者さんが見学に来たり、関わってくれたりしていますが、不燃ゴミの中で最近目立つようになってきたのは、焼きものだというんですね。資源化されずに残っているのは焼きものだ、と。

──それはゆゆしき事態ですね!

 今までは、できるだけ安く作って大量に売れて、よく儲かるようなデザインをしてきたじゃないですか。
 でもこれからは違います。これからデザインされて作られるもの、食器だけではなく車も何もかもすべてに言えることですが、プラス環境、エコロジーを配慮して、地球環境にできるだけ負荷を与えない、人間や自然環境の保全を考えながらデザインしていく。

 この“環境を抜きにしてデザインを考えると、いくら面白いデザインであってもこれからは意味を成さない”というのが僕の持論です。ライフサイクル・デザインといって、食器だけではなく製品が持っている一生をどうデザインするか。
 ものってやっぱり、人間と同じように寿命があるじゃないですか。寿命がつきたあとまで責任を持つようなデザイン。これが、これからのデザインだ、といつも言っているのです。
 
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